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カフェテリアプランの制度設計と導入事例(連載2)
第二回 カフェテリアプラン導入原資の調達

|可児俊信
千葉商科大学会計大学院 教授 (株)ベネフィット・ワン ヒューマンキャピタル研究所 所長

カフェテリアプラン導入に必要な原資



原資調達額は、カフェテリアプラン制度に必要な費用額によります。導入後にかかるランニング費用は、次の3項目です。

① 従業員に付与するポイント金額の費用

これは、「カフェテリアプラン対象者数×一人あたりの付与ポイント数(円換算)」です。付与ポイント数は、導入企業によって様々ですが、ベネフィット・ワンが運営受託しているカフェテリアプラン300団体の平均付与ポイントが58,000ポイント(2012年度実績)です(1ポイント=1円換算)。仮に、1,000名規模で、60,000ポイント付与するなら、6,000万円が必要ということです。

これはあくまで平均値であり、実際には3万ポイントから20万ポイント以上まで幅広く分布します。幅広い理由は既存の福利厚生制度をどの程度大きく見直すことができたかによります。
付与ポイントが少ない場合、従業員にとって福利厚生の選択の余地が十分でなく多様な従業員ニーズに十分応えることができなくなります。

② カフェテリアプラン管理費用

カフェテリアプランの制度管理は、他の福利厚生制度に比べて煩雑です。従業員一人一人の持ちポイントを履歴管理し、現時点での残ポイントも常に把握できる状態にしておく必要があるためです。管理費用には、管理システムの開発・維持・更新費用に加えて、担当者の人件費が含まれます。

一般には、管理の煩雑さを回避するために、外部業者が現れた2000年以降では管理業務を外部に委託する例がほとんどです。その場合外注費が発生します。管理業務は、ポイント消化の申請受付や申請証憑の精査、消化履歴の記録・管理に加え、カフェテリアプラン利用者からの照会対応や消化ポイント金額の従業員の返金データ(通常は加給で返戻)の作成等多岐にわたります。外注費は、委託業務の範囲の広さや、カフェテリアプランの対象となる従業員規模によって異なります。ある

③ 福利厚生パッケージ会費

カフェテリアプランにおいて、メニューの十分な選択性を担保するために、福利厚生パッケージ(福利厚生代行、福利厚生アウトソーシングとも呼ばれる)を同時に導入し、自社の福利厚生制度以外にも選択肢を増やすケースが一般的です。その場合は、従業員数に応じた会費負担が発生します。会費は、パッケージ提供業者やそのサービス水準によって異なります。パッケージ業者主要5社のHP上の記載では、従業員1名当たり月額で250円から1,050円と幅があります。

この3つが毎年必要なランニング費用となります。

福利厚生目的の見直しと原資調達

カフェテリアプラン原資は、まったくの新規予算で確保される例は少なく、既存の福利厚生制度をスクラップして原資を調達するか、またはいくらか新規予算を上乗せして調達されます。スクラップの対象となる福利厚生制度は、会社が志向する福利厚生の目的に沿わない制度かあるいは課題視されている制度です。

図表1は、福利厚生の目的を余暇重視から疾病予防・健康増進重視に見直す過程で、会社の施策に沿わない制度をスクラップしてカフェテリアプランを導入した事例です。

図表1

課題視されている福利厚生制度の例とその見直し



課題視されている福利厚生制度には、①一部の制度利用従業員に福利厚生受益が片寄っている、②現在のニーズに合わないが代替策がないため存続している、などがあります。

① 受益が片寄っているとされる制度の代表が社宅制度です。社宅制度は転勤施策の下支えであるため制度は存続させますが、社宅使用料を適正水準まで引き上げることで福利厚生原資を削減し、削減分をポイント原資に振り替えます。結果的に、ポイント付与を通じて社宅に偏っていた福利厚生費が他の福利厚生分野に再配分されます。
社員食堂の会社補助も同様で、補助を引き下げて適正な受益者負担を求める一方、同時にカフェテリアプランメニューに昼食補助を入れ、従前の従業員受益をある程度担保しています。また所得税制上、非課税の恩典がある食事券をポイントで購入するメニューが採用されることもあります。

② 現在の福利厚生ニーズに合わない制度としては、医療費補助(保険適用内医療費だけでなく、差額ベッド代等の保険適用外も含む)があります。社員の疾病予防・健康増進を促すことで生産性の向上と医療費の削減を図ろうという社会の方向性の中では、やや後ろ向きな制度に見えます。
宿泊補助は、割引で利用できる宿泊施設が増えていることから、その必要性は低下しているといえます。
結婚祝金、出産祝金といった慶事給付は、結婚した従業員だけしか受給できないため、生涯未婚率の上昇、ライフスタイルの多様化にはなじまないものとなりつつあります。

社会保険料の負担軽減による原資調達例



最新の原資調達事例として、福利厚生制度の見直しを通じて、会社の社会保険料負担(法定福利費)が軽減され、それを原資にカフェテリアプランを導入した例を掲げます。C社はノンバンクで従業員数は約200名です。同社の主要な福利厚生制度は、退職一時金制度と住宅手当であり、この2つを見直しました。

<退職金制度の見直し>


退職給付債務をなくすため、退職一時金制度を廃止し退職金前払手当制に移行しました。廃止が従業員の不利益とならないよう代替措置として基本給の10%を退職金前払手当として給与に加算しました。さらに手当を現金で受け取らず確定拠出年金の掛金とする選択肢を用意しました。掛金は給与とも報酬ともみなされず、所得税・住民税等や社会保険料等の対象になりません。

<住宅制度の見直し>


住宅手当制度を廃止して社宅制度を導入しました。社宅の入居要件は従来の住宅手当の受給要件と同一です。要件を満たした従業員に対する社宅費用は、従来の手当原資を振り替えて充当していますので、会社にとって新たな費用負担はありません。住宅手当は税・社会保険料の対象ですが、社宅の提供を受けている経済的利益は、法令が定める所定額以上の社宅使用料を従業員が負担することで税・社会保険料とも対象となりません。

同社の住宅手当は35,000円/月でした。従来、従業員は住宅手当35,000円を受け取り、100,000円の賃料の物件に入居している場合、住宅手当は税・社会保険料の対象となるため額面35,000円に対して手取りはその2/3程度の23,000円弱に止まります。よって入居者の賃料の実質負担は約77,000(100,000-23,000)円である。

一方、社宅制度では会社が家主に100,000円の賃料を払い、入居者である従業員から65,000円の使用料を給与控除します。税・社会保険料がかからないため、従業員の実質負担は65,000円にとどまり、住宅手当より有利です。

選択制確定拠出年金で退職金前払手当ではなく掛金(最高額4万円)を選択し、かつ社宅にも入居(従前の手当額3.5万円)した場合、税・社会保険料の対象からはずれる手当額は年間で90万円(4万円×12月+3.5万円×12月)。よって税の軽減は年間181,890円(90万円×税率)、社会保険料の軽減は年間134,145円(90万円×社会保険料率)、合計で約316,035円です。

従業員だけでなく会社が負担する社会保険料(法定福利費)も139,995円軽減となります。同社では従業員全体で法定福利費が1,306万円軽減されました。従業員一人あたり約5.5万円の負担減となったため、これを原資として同社はカフェテリアプランを導入し、ポイント原資(3万ポイント)、カフェテリアプラン管理委託費、福利厚生パッケージ会費、そして社宅管理委託費に充当しました。

福利厚生制度も充実しました。導入前は住宅手当と退職一時金制度でしたが、後は借上社宅制度、選択制確定拠出年金、そしてカフェテリアプランです。今後も社会保険料率の上昇が見込まれることから、社会保険料負担軽減果はさらに大きくなります。

(注)上記軽減額算出時に使用した保険料率等は、事例掲載にあたり最新のものに置き換えている。
社会保険料率(厚生年金:17.12%、健康保険:協会けんぽ(東京都)9.97%、介護保険(協会けんぽ1.72%、雇用保険:1.35%、労災保険:0.3%)
税率(所得税率:10.21%、住民税率:10%)

まとめ

カフェテリアプランは既存のメニューを保持しながら課題を抱えている福利厚生制度をスクラップし、財源を確保することができます。そのため、従業員の理解を得ながら課題解決と福利厚生の充実を一挙に実現することができる点が大きなメリットとなります。

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