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カフェテリアプランの制度設計と導入事例(連載3)
第三回 カフェテリアプランのメニュー設計

|可児俊信
千葉商科大学会計大学院 教授 (株)ベネフィット・ワン ヒューマンキャピタル研究所 所長

カフェテリアプランの導入準備プロセス

 前回コラムでは、カフェテリアプラン導入原資の調達事例について紹介しました。今回コラムでは、カフェテリアプラン導入におけるメニューの採用等において重視すべき点や最新トレンドについて説明いたします。

 カフェテリアプラン導入の工程としては、①ポイント原資の調達(既存の福利厚生制度のスクラップ等)、②カフェテリアプランのメニュー設計、③事務運用フローの設計、④ポイント管理等のシステムテスト(外部委託の場合は、双方向のデータ授受テストを行います)、⑤従業員向け説明会、等が必要となります。

 5つの工程のうち中核となるのが、②のメニューの設計です。様々な福利厚生制度がある中で、どの制度をカフェテリアプランのメニューとするのか、言い換えれば会社としてポイントを補助してまで従業員に使ってほしいメニューは何なのかを決定するものです。

 なお、カフェテリアプランを導入するにあたって、メニューや付与ポイント等の制度設計やポイント導入後の制度運営をアウトソーサーに委託するか、自社で運営を行うかで準備期間が大きく異なります。アウトソーサーに委託する場合、最短で6カ月程度で済みますが、自社運営の場合は、ポイント管理等のシステム構築が必要であることやカフェテリアプランメニュー設計のノウハウが社内に無いこと等から1年3カ月程度の準備期間が必要です。


採用されているメニューの分野
 実際に採用されているメニューについて、㈱ベネフィット・ワンがカフェテリアプランを受託している全団体でのメニュー(延べ約11,000メニュー)を、福利厚生制度の分野別に集計したものが図表1、その分野別の内容を示すものが図表2です。

図表1

図表2

 採用率が高いのは、「育児・介護」(メニュー全体の22.2%)、「健康増進・疾病予防」(同20.8%)、「余暇・レジャー」(同19.4%)、「自己啓発」(同14.6%)となっています。「余暇・レジャー」を除き、これらのメニューは従業員の能力向上や働きやすさといった生産性向上につながるものです。

 一方、「会社生活」「財産形成」「住宅」といった生活支援に関するメニューは、それぞれ10.6%、8.4%、3.8%と採用率はあまり高くはありません。しかし、生活支援に関するメニューを採用することで従業員の満足度の向上や人材定着の効果も期待できるうえ、特に「財産形成」は退職後の従業員の生活費の準備を支援する重要なメニューとなるため、従業員の自助努力を促すために企業が政策的に活用するケースも見られます。
 また、生活支援に関するメニューは、後述するように、現行の福利厚生制度の改廃を行いやすくする、ポイント消化率を高くするために採用することもあります。

メニューの設計時の視点


 メニュー設計においては、まず、①従業員の能力向上や働きやすさへの貢献、人材定着の効果といった、会社として利用してほしいメニュー(「育児・介護」、「自己啓発」、「財産形成」等)を採用します。なお、こうした会社として利用してほしいメニューの利用を促すため、使用ポイントの倍率を変更することも有効です。

 次に、②カフェテリアプラン原資の調達に際して廃止する福利厚生制度について、カフェテリアプランのメニューとして採用するかどうかを検討します。カフェテリアプラン原資の調達に際して見直しの対象となる主な制度に、社宅制度や保養所等があります。こうした制度は、既得権者への配慮等が必要な場合に家賃補助メニューや宿泊費補助等のメニューの採用について検討することになります。

 また、③ポイントの消化率を一定程度高めるため、宿泊・旅行費用等の「余暇・レジャー」分野のメニューや昼食補助、自社製品購入等の「会社生活関連」分野のメニューについて採用を検討するケースもあります。

 カフェテリアプランの浸透度は、通常、ポイントの消化率で測定されますが、消化率に対しては、会社によって様々な考え方があります。まず、一般的にはカフェテリアプランを導入している多くの会社で福利厚生制度を浸透させるために消化率を高めようと取り組んできました。一方、カフェテリアプランに採用するメニューは会社としてコストをかけてまで従業員に利用してほしいメニューであり、その考えに合致しないメニューを導入してまで消化率をあげようとしない方針の会社もあります。その場合、消化率は低くなりがちです。

最新トレンドのメニュー

新しいメニューをいくつかご紹介します。

(1)個人型確定拠出年金の加入者掛金補助メニュー
 2017年1月から確定拠出年金において、個人型年金の加入者範囲が拡大しました。当メニューでは、掛金拠出額の範囲内でポイントを申請・消化でき、拠出額をポイントで補てんします。よって実質的な自己負担がなく、掛金を拠出でき、結果として小規模企業共済等掛金控除という税制メリットを活かしつつ、従業員の財産形成を促すことに繋がります(図表3)。

図表3

(2)家事代行補助メニュー
 専業主婦世帯に比べ、共働き世帯では、女性に家事の負担がかかりがちです。家事代行サービスを利用することで、女性の家事負担を軽減し、休日をリフレッシュの時間として使うことができます。家事代行は、自己負担が伴う場合、利用をためらうケースが多いですが、カフェテリアプランのメニューとすることで利用しやすくなります。

(3)語学習得補助メニュー

 自己啓発メニューの1つであり、英会話教室の授業料等を補助するメニューです。従来からある通学型の資格取得補助メニューと同じですが、経営のグローバル化に伴い、重要になる語学について、語学修得を支援する会社の姿勢を明らかにするためには、自己啓発メニューから独立させるとより効果的です。

(4)海外赴任者メニュー

 グローバル化の進展に伴い、海外赴任者も増えており、海外赴任者が国内勤務者と比べて、ポイント消化において不利とならないよう海外赴任者専用のメニューを採用する企業もあります。最も多いのは、日本の食品や書籍・CDを取り寄せるケータリング費用を補助するメニューです。その他には、国内に預けてある家財のトランクルーム費用、介護費用、留守宅の見守りサービス費用の補助もあります。

(5)募金メニュー
 残余ポイントを寄付できるメニューです。申請したポイント額が募金額となります。従業員が募金先を指定できるケースと指定できず会社が指定した募金先に寄付されるものがあります。

 同様にボランティア活動補助メニューもあります。これはボランティア活動にかかった実費(交通費、材料費、通信費等)の範囲内で補助します。ポイント申請があった際にボランティア活動に該当することを会社が個別に審査・判定する仕組みとなっています。

 カフェテリアプランは従業員に提供するメニューを自在に設計できるため、福利厚生制度に対する会社の目的や意志を効果的に反映でき、また重点施策のポイント還元率を上げる傾斜運用を行うことで従業員への企業メッセージの伝達や利用促進につなげることも可能です。多様化する従業員の要望に応えるためだけにメニュー設計するのではなく、会社としてカフェテリアプランを通じて従業員に何を伝えたいのかを主体に考えてメニュー設計を行っていくことが必要と言えます。

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